第235章 天邪鬼の愛〜中紅花〜(22)時が繋がるルージュ編
まだ、絶賛片思い中だった家康。
ーーもしかして、付き合ってるのか?
ーー……まだ、付き合ってない。
編集長に聞かれ、素っ気なく返事をした当時の自分には想像も出来なかった……
「ん…っ…」
ひまりの可愛いキス顔が近づいてこれば……
(可愛いとかっ…軽く、通り越してるし///)
とても正常ではいられず、目まいに似た気が遠くような恍惚感が訪れる。目の下に熱が集まり出すのを自覚しながら、自分も唇を近づけ……
(……もう、襲っていい?)
外でなければ、とっくにぷっつりと理性が飛んでいた所だった……
………が!!
「っ!?!?」
危うく飛び上がりそうになったのは、心臓のほう。ある光景を見て、まさに雷が落ちたような衝撃を受け家康は固まる。
数十秒後。
???
(……あ、れ?……)
まさか家康がショーウィンドウの中を見て、目を白黒させていることなど知らないひまり。いつまでも降りてこない柔らかい感触に、もしかして自分のキス顔が変だったのかと不安に思い、ちらりと片目を開ければ……
そこにはいかにも驚いて声を失った!という、表現がぴったり当てはまるような、家康の顔。ある一点を凝視する目を見て、ひまりは不安から不思議へと気持ちが切り替わり、小首をん?ん?と、傾げつつ家康の顔の前で手を振る。
「どうしたの?」
と、尋ねた瞬間。
コンコンッ!
「何で、こんな所に……」
背後にあるガラスをノックする音。家康のすらりとした指が背後を指すのが、ほほ同じタイミング。
ごく自然の成り行きのように、
スッと振り返ると……
煌びやかなドレスが飾られたショーウィンドウ。その中で陽気に笑う中年男性。
「えっ……うそっ!!編集長さん!?」
意外な人物を見て、ひまりは腰を抜かしそうな程、驚きに溢れかえった。