第235章 天邪鬼の愛〜中紅花〜(22)時が繋がるルージュ編
軽く言い寄られ口元を覆い、キッと強気な目で見上げるひまり。強気と言うより、その目は「だめっ!」と可愛らしく訴えているようにしか、家康には思えず……
少し口元を緩め……
(……ちょっとは、元気出たみたいだね)
こめかみ部分にキラッと光る、三つ葉のヘアピンにちゅっ、と触れるだけのキスを落とす。
騒ぎが起きる前、
ガラスに映った曇った表情。
ドレスに夢中になる輝いた瞳の中。そこち落とした影に家康は気づいていた。いくら取り作ったところで、一度出来てしまった心の傷は消えないことは、天音の一件で痛感している。
しつこく聞いて掘り返すのも、だからと言って放っておくことも出来ないのが「心の傷」
だからこそ、そんな時ほど……
「家康……?」
「……ドレス似合ってた。……だけど、あれは露出しすぎ」
褒め言葉を言いつつ文句はちゃっかり。 嘘偽りない言葉を告げるのが……
「ありがとう。……頑張って作ったから、嬉しい!」
笑顔を咲かせる種になるのかもしれないと、家康はぱぁっと心から明るく笑うひまりを見て、実感。
「また、したくなった」
「え??何を??」
「見せつけるのも、たまには良いかも」
「可愛い」の言葉は呑み込み、キョトンとする大きな瞳に吸い込まれるように、その変わりの想いを運ばせようと家康は広告カットと同じポーズをして……
「キス顔見せて。……あの時とは全然違うから」
ピンク色のリップを付け、ぷるんとした唇を指でなぞる。触れたくても、触れれなかったルージュ撮影。
(今は、もっと可愛いし)
ひまりは伏せ目がちになった、翡翠の瞳にドキリと胸に何かが突き上がるのを感じて、返事の代わりに目の前のシャツを甘えるように掴み……
(今は、もっとドキドキする)
潤みがちの目でチラッと見つめた後、
唇をそっと近づけた。