第234章 天邪鬼の愛〜中紅花〜(21)時が繋がるルージュ編
今、飾られているのは、限りなく透明に近いブルーのエンパイヤドレス。腰元から下はグレーのチュール素材も混じり、ふんわりと切り替えが入っている。胸元に散らされた白い小花が可愛くて、繊細なデザイン。
昨日の買い出しで見たばかりなのに、そんな事はとっくの昔に忘れたみたいに……
コツンッ。
(ほんと、綺麗……シックなのに華やかさもあって可愛い……)
私はつい夢中になって、
ガラスにオデコをくっ付けた。
(ドレス初めて作ってみたけど難しかったなぁ……次は、もっと本格的なの仕立ててみたい)
キュッと掴むように指でガラスに触れれば、そこには少し表情が曇った私が映る。
引き裂かれてしまったミニ丈ドレス。
今は、鞄の中。
ゆっちゃんは大絶賛してくれたけど、一番見て欲しかった家康にはすぐにブレザーを羽織るように注意されたから、特に感想らしい感想は貰えないまま……もう、着れない状態になってしまった。
頑張ったんだけどな……
ちょっと残念に思って、肩をストンと落とした時。
ーー……良いカラダしてんな。
ゾクッ。
引き裂かれた時の言葉が走馬灯のように頭を駆け巡り、ぞわりと鳥肌が立つ。思わずギッ……耳を塞ぎたくなるような爪音を立て俯くと……
「ひまり」
急に左耳あたりの横髪に息がかかり、一瞬ズキンと痛みそうになった胸が、今度はドキッと大きく一つ鳴る。
ガラスに映る自分の姿を確認するように視線をもう一度戻せば、そこにはガラスに両手を突き、私の耳元に口を近づけた家康の横顔が映っていて……
(ち、近いよっ///)
途端に心拍数が上がり、ガラスに映る私がくすぐったそうに口を動かす。
「な、なにっ///」
「ここに居たら、色々とマズイかも……」
え??
「や、やっぱり!あの二人じゃないっ!」
「まじかっ!!」
「ほら、あの広告の!!」
家康の声の後に聞こえたのは、
数人の学生たちの騒ぐ声。