第234章 天邪鬼の愛〜中紅花〜(21)時が繋がるルージュ編
人々が忙しげに行き交う駅前。
帰りを急ぐサラリーマンの人や、携帯を弄りながら前方を見ずに歩く学生。
ゆっちゃんと政宗と交差点で別れた私達は、帰路に向かって……
ゆっくり、ゆっくりと歩いていた。
つい私が話すのに夢中になって余所見をしたり、横を向いて喋っていると……家康は繋いでいた手を引いたり、腰を引き寄せたりして、誰かと肩がぶつからないように注意を払ってくれる。
時々、ふと思う。
どうしてこんなに、
大事にしてくれるんだろうって。
付き合う前も、付き合ってからも。
小さい頃からずっと。
でも考え出すと何故か、
いつも泣きそうになるから……
「でも、総合優勝!秀吉先輩と副部長のクラスだったから、それはそれで嬉しいね!」
「ってか。三成がバカみたいに買い占めたんじゃないの?どーせ……」
呆れたというように家康は肩を軽くすぼめ、焼きそばが入った鞄を抱え直す。
「ふふっ。かもしれないね?」
私は笑顔を見せる。見せたくて、見て欲しくて、でも無理にじゃなくて……一緒にいれるだけで幸せで、自然と笑顔が溢れるのかもしれない。
(怖かったけど……こんな風に笑えるのは、家康が側にいてくれるから)
私が一番怖いのは、
家康と一緒にいれなくなることだから。
「ってか!鞄!もう、本当に自分で持つから!」
「……だめ。この焼きそばの重さ半端ないから」
私が冗談っぽく、愛の重さ?って聞くと、家康は三成くんの下心の重さとか言って、ブツブツ文句。
「次は学園祭だね!二日間もあってイベント盛りだくさんだから、すっごく楽しみっ!」
「そう言えば、秀吉先輩が何か企んでたっけ。俺も強制参加とか……はぁ。嫌な予感しかしない」
(強制参加?何だろう……また、劇でもやるのかな?)
通りがかったのは、
いつものショーウィンドウ。
飾られたシンデレラみたいな、
煌びやかなドレス。
お決まりのように私の足は吸い寄せられ、秀吉先輩の劇の練習相手をした、まだ真新しい思い出にクスリと笑った。