第234章 天邪鬼の愛〜中紅花〜(21)時が繋がるルージュ編
体を少し反らして背中を押さえる家康に、政宗がやれやれ顔で近づく。
「こら。少しは労ってやれ」
政宗の嗜めるような言葉に、
ゆっちゃんは負けじと……
「お灸よお灸!」そう言い返すと、
私の腕を引っ張って歩き出した。
「……女の趣味。変わったね」
「そうか?回りくどい素直さも、案外悪くねえ」
「ふーん。俺には多分、一生理解出来ない」
「だろうな。ひまりとは、違う素直さだからな」
「ふんっ!!」
背後から何を言われてもツーンとした態度でズンズン歩きながら、
「大体!政宗が大怪我とか言うからさ」
「骨の一、二本は折れてるとかさ」
早口で次々と愚痴をこぼす。
その言葉からどれだけ家康を心配してくれていたか、そのゆっちゃんなりの優しさがひしひしと伝わる。
(家康もそれは、きっと同じ)
ありがとう。って、真っ先に言いたくて堪らなかったけど……
でも、代わりに……
「ゆっちゃん!おめでとう!」
私がありったけの笑顔で向け、まず口にしたのは一番に言いたかった言葉。
「約束したんだからっ///は、話!ゆっくり聞いてよっ///」
途端に顔を夕焼け色に染めて、ぽりぽり指で頬を掻く仕草をしたゆっちゃん。その横顔が本当に可愛くて、私は頬がくっ付くぐらい、腕にしがみ付く。
「思わず、教室飛び出しちゃってさ」
私は隣で相槌を時々打ちながら、
話を聞いて……
「あの時はごめんね。とてもじゃないけど、幸せそうな二人。見てらんなくて、……涙堪えるだけで必死でさっ!」
それには、ただ静かに首を振った。
時折ゆっちゃんは振り返って、後ろを歩く二人の様子を気にしながら、政宗の元カノさんの事。胸がきゅんきゅんするような、告白の話、自由行動の時の話。私達がいない間にあった出来事を包み隠さず全て話してくれた。