第234章 天邪鬼の愛〜中紅花〜(21)時が繋がるルージュ編
今は、明智先生と話をしているみたいで。じきにここに来るから、もう暫く待つように私は言われ、頷くと……
おじさんの顔色から穏やかさが消え、
真面目な硬い表情が浮かぶ。
「今回の件で、いくら日頃から懇親にさせて貰ってるとは言え、大事なお嬢さんに怖い思いをさせ、巻き込んでしまったのは事実」
「でも、家康は少しも悪くなくてっ!」
「勿論、悪いのは絶対的に加害者だ。俺が言いたいのは、家康の判断力のことだよ。本人もそこは素直に認め、反省していた」
周りに頼るのは、決して弱いことではない。時には必要不可欠。感情だけで突っ走ってばかりではいけない。
「これでまた一つ大人になったよ」
おじさんは少し誇らしげにそう言って、笑った瞬間……診察室がある方の通路から話し声が聞こえ、明智先生と家康がこっちに向かって歩いてくるのが見えた。
「良かったの?明智先生、送ってくれるって言ってたのに」
「普通に歩けるし。……それに文化祭……。二人で回れなかったから、帰りぐらいは……」
そう言って、さり気なく私の手を取ると歩き出す家康。耳元が気のせいか少し赤い気がして……
(ありがとう)
擽ったい嬉しさが込み上がって、何だか落ち着かない気分。指を絡ませてぎゅっと握り返すと、出口に向かって歩きだす。
自動ドアを通り、
外気の冷たい風を浴びる。
病院から出る頃には、
すっかり日が暮れていて……
「やっと出てきたわねっ!!」
「よっ!!」
「ゆっちゃん!!政宗!!」
バス停のベンチ前に立つ二人に、
駆け寄る。
「思ったより、元気そうじゃねえか。てっきり、包帯ぐるぐる巻きで出てくるかと予想してたのによ」
「はぁ……。わざわざ、そんな事……言いにきたワケ?」
「まさかっ!お灸をたっぷり据えにきてあげたのよっ!」
「……先に言っとくけど。惚気とか一切、いらな……!!」
ドンッ!!
「いっ!!!」
「そんだけ減らず口叩けたら、大丈夫そうねっ!」
家康の背中を容赦なくゆっちゃんはバシッと叩くと、聞こえるか聞こえないかぐらい小さな声で……
「っとに。心配して損した」
家康の口真似みたいにボソッと呟いた。