第51章 「恋の和歌集(15)家康様編」
お風呂でシャワーを浴びた後、部屋に戻った私は、教科書とノートを机の上に広げる。
『ここ重要』
家康の綺麗な字をなぞりながら、突っ伏して重い息を吐いた。
ーー俺の気持ち、わかった?
わかんないよ。
ますます。
一緒にいても、迷惑じゃないとは言われたけど。
ただ、わかったことは
家康に触れられた部分が
熱く……。
(うぅ……///)
男の子だから、興味があるのは仕方ないのかもしれないけど。
(何で、私なの……)
好きな子いるんだよね?
彼女だって、家康ならすぐに…。
ーー……本当に好きになった子しか、彼女になって欲しくないから。
(本当に好きになった子?)
ーー俺だけ見てたら、すぐ解るから。
(う〜〜ん……)
前にキスした時に言われたあの言葉の意味も、わからないまま。
はぁ。
何だろう。
さっきからずっと、家康のことばっかり考えて。ため息ばっかり吐いて……
(明日、テストなんだから集中しないと)
ふと、顔を上げると机の棚に
一冊の本が立っている。
『恋の和歌集』
題名に目がいき指でクイっと取り出しパラパラと捲る。すっかり忘れていた、佐助君に貰った本。
ーーぜひ、この万葉集を詠んで君にピッタリの和歌を見つけるんだ!
(ピッタリの……?そうだ!今日二人に貰った課題!)
私はハンガーに掛けたスカートのポケットに手を入れ、取り出す。
一枚は水に濡れて字が溶けたように滲み、とても読めそうにない。
けど、もう一枚の方は何とか……
『朝に日に 見まく欲りする その玉を
いかにせばかも 手ゆ離れずあらむ』
(大伴宿禰家持)
私は和歌集で調べる。
字を見る感じ、家康が選んだ和歌。
何故か心が騒ついた。
今の私に合った和歌なんて見つけれなくて。
織田先生、三成君、家康の三人の和歌は全部片思いを、詠んだ和歌。
それだけはわかった。
六人の戦国武将の内、四人は好きな人がいて……。
後は、秀吉先輩と明智先生。
二人にも好きな人がいたら?
悩み悩んでいる内に、
私はいつの間にか眠りに落ち。
ピロンッ。
一件の受信メール。
「ひまりの所為で、眠れない」
それに気づいたのは翌朝だった。