第233章 天邪鬼の愛〜中紅花〜(20)
ぎゅっ。
「一番辛いのは、泣いてばっかりで、守って貰ってばかりで、何にも出来ない自分自身。だからっ……だから……」
いじらしいぐらい一生懸命に話して、今にもぽろぽろ泣きだしそうな顔してんのに……
「ひまり……」
いつもなら俺が目が覚めた時点で、泣きじゃくりそうなひまりとは違い、目をつぶり、自分の心の奥底を覗き込むような表情を俺に見せながら、まるで強く自分自身に言い聞かせるように……
強くなるから。
泣かないから。
そう言って瞼を持ち上げ、
何一つ曇りのない瞳で。
「約束するから……」
《ドクッ……》
心臓の音。
それがひどくゆっくり打ちはじめ……
「……助けに来てくれて。助けてくれて……本当にありがとう」
《ドクンッ》
ひまりの言葉。
その一つ一つに反応して……
「格好良かったよ。強くて、私の為に……あの時ね。家康の腕の中で……ぬくもりを感じた時……」
私は……
これからきっと……
「家康に……何度でも、恋をする」
そう思ったの。
俺の瞳に……
薄っすら涙を浮かべ、
ふわりと笑うひまり。
それと……
私は必ず……
ーーあなたにもう一度、恋をする。
哀しげにふわりと笑う……
もう一人のひまりが重なった。
《ドクンッ!》
直接聞こえるほどの大きな鼓動。
身体中の血液が一気に駆け巡る瞬間。
「つっ!!!」
咄嗟に抑えた左目。
眩暈を起こしそうな程の強烈な……
目を握りつぶられたような激痛が走る。