第233章 天邪鬼の愛〜中紅花〜(20)
感触。柔らかいとかぬくもりとか。
ひまりに触れると、そんなことより違うものが手から染み込む。
何で俺がこんなにひまりが好きなのか、その理由が感触から溶け込むように伝わるから、ほんと不思議。
「……昔から……辛いこと話す時とか……思い出す時……手首、強く握る癖あったよね」
記憶を辿るようにして、
いつもより遅い口調で尋ねる。
照れてる時は髪を耳にかける仕草。
恥ずかしがりながら、困ったり、大切なこと話す時は髪を掴んだり弄る癖。今は、俺があげた三つ葉のヘアピンに触れる仕草も増えた。
落ち着かない時は指をもじもじ動かすし、そわそわしてる。
そんな事は、いつだって忘れない。
「………これは……その……」
言いにくい時とかは今みたいに唇噛むし。誤魔化したりする時は視線を泳がす。一生懸命な時は目を強く瞑るし。真剣に何かを伝えたり話を聞く時は……
「……………」
「……ほんと…ごめん……」
「家康……」
濁りのない澄んだ大きな瞳の中に、俺を取り込んで名前を呼ぶ。それが潤みを増していくのを見て、微かに俺の手に頬が擦り寄るのを感じ……また泣かせる。そう思った。
(……思い出したくないぐらい怖い思いをさせて、根掘り葉掘り警察に聞かれたはず)
辛い思いをさせた。
そう思うと同時に、
盛大な溜息を俺は吐く。
跡がつくぐらい、手首を強く握りしめ警察に状況を聞かれているひまりが脳裏に想像できて……頬に触れた手の指を、そっと目元に滑らそうとした時。その手をひまりのもう一つの手が、止めた。
「え……」
「泣かないからっ」
予想外の言葉に開いた口が塞がらなかった。恐らく俺は今、間抜けな顔をしてるはず。
「泣かないよ……泣かないからっ。謝らないでっ……謝らないで……」
誤って欲しくない。