第233章 天邪鬼の愛〜中紅花〜(20)
白いカーテンがまた音を立てる。
織田先生は後ろ手でカーテンを閉めるや否や仁王立ちして警察が今、帰った事を告げた。
「どうやら……あの三人。夏の大会後、色々と悪事を重ねていたらしい。今は停学処分中だそうだ」
「停学…っ…処分……?」
口を動かす度、神経がギシギシ軋むように痛む体の節々。そこに意識を向けないよう息を吐き、織田先生の話に耳を傾ける。
ひまりは既に聞いていたのか、特に狼狽えることもなく、涙を拭いていた手を下ろすと俺と同様、耳を傾け織田先生次の言葉を待っているかのようだ。
「引退して羽目を外し過ぎたのが恐らく、原因だろうな。有名な弓道名門校……厳格な練習でほぼ休みもなし。しかもここ数年、大会には名を上げれず顧問も大分、神経を尖らせていたようだ」
「……で、弟の件もあり。矛先が俺に向いたってこと」
「医者の一人息子。大会には名を上げ続け、極め付けに………まぁ。嫉妬、妬みの対象になる材料は十二分に揃っていただろうな」
極め付けに……その先を織田先生が濁したのは、ひまりの心情をはかってのことなのは理解出来た。
(俺が贈り物をした所為で……ひまりの存在を……)
夏の大会時には、
まだ俺たちは付き合っていない。
でも今回は、俺をおびき寄せ弱みとしてひまりに手を出した。
誰にも触れさせたくない肌に、
汚い手で触れられ。
そんな奴らに力づくで……どれぐらい怖い思いをひまりにさせたのかと、考えれば考えるほど気が狂いそうになる。
(この痣……まだ真新しい気も……)
少し紫がかった色味の上から、赤みを付け加えたような痣。俺はひまりの手首を、壊れ物を扱うようにそっと撫でた。
ピクッと反応した小さな手。
時間にすれば、ほんの束の間だった。