第232章 天邪鬼の愛〜中紅花〜(19)
汚れひとつない真っ白なカーテンの向こうで、寝息を立てている家康。
(……家康)
まるでその姿が見えたかのようにひまりは、静かに鼻から息を吸い込み肩を下ろしながらゆっくりと吐き出した。
あの後、他校生が連行されていく空き教室の現場に、野次馬のように集まった生徒や一般客。信長と光秀が注意を逸らしている間に、秀吉に付き添われ保健室へと移動した家康。ひまりも自分も一緒に行くと伝えたが、政宗と三成にまずは教室に戻り着替えるの先だと言われ……
引き裂かれたドレスを見られないように、信長が肩に掛けてくれたマントをしっかりと羽織り、家康のブレザーを抱き締めながら教室に一旦、戻った時だ。
信長が放送をかける前だった為、まだ事情を知らないクラスの皆んなに囲まれたひまり。次々に、警察が来た事や店が大忙しだったことを矢継ぎ早に話すクラスメイトに迫られ、思いのほか保健室に来るのに時間がかかってしまっていた。
事情聴取が終わり次第、すぐに病院に行くのだと思い置いてけぼりをくわないよう、急いで制服に着替えるのに精一杯だった為……
………荷物のことまでは気が回らず、教室に置いてきたまま。
(……行かないって言っても、後で病院に連れてくからね)
あちこちに出来た痣。その傷を家康の両親が見た時のことを思うと胸がちくりと痛み、ひまりは目を閉じる。