第232章 天邪鬼の愛〜中紅花〜(19)
文化祭真っ只中。
起きた一連の騒動。それは、パトカーが学園から去ると共に過ぎ去る所か、生徒が騒ぎ出しはじめてしまい……急遽信長が対処として他校生が鍵を職員室から勝手に持ち出し、空き教室に侵入していた為、警察を呼んだことを放送で説明した。
保健室___
窓から差し込む日の光。
個人個人の区画で仕切られた白いカーテン。清潔感が溢れたパイプベッドの上で、形の良い唇の横に痛々しい青痣をつくった家康から聞こえた寝息。
回転イスがきぃ、と音を立て……
「簡単な事情聴取だけ受けて、今は寝ている。おれがくれぐれも大人しくしていろと忠告したからな」
白衣姿の光秀は後ろに立つひまりに、そう告げる。
「怪我はっ!?病院にいかなくて大丈夫なんですかっ!?」
それを聞いて驚き、つい大きな声出してしまったひまり。ベットで寝ている家康の事を思い、ハッと手で口を塞ぐ。
「……ごめんなさい。てっきり病院に…………」
「腹部と背中を集中的にやられたようだ。痣も複数ある。恐らく打撲はあちこちしているだろうな。俺が診た所、肋骨や臓器には問題はない」
「…痣と打撲……だって……あんなに、いっぱい……」
そう消え入りそうな声で言うとスカートをぎゅっと掴んだ。薄暗い空き教室で、家康が他校生から暴行を受けた時の状況を思い出してしまい、ひまりの目頭がじわじわと熱くなる。
「後で警察がもう一度、此処に来る。その時に、お前も事情や状況を聞かれる。……辛いのはわかるが、家康の為にしっかり話してやれ」
「はい。なら、荷物だけ取りに行ってきます」
涙をスッと引っ込め、唇を噛み、閉められた白いカーテンを見つめたひまり。