第231章 天邪鬼の愛〜中紅花〜(18)
相変わらず喫茶は繁盛。
人手が足りず、クラスメイトは慌ただしく接客しながら、弓乃の言葉に数人が首を振り、それよりも早く手伝って欲しいと声をかける。
(まだ、呼び込み中とか?)
ひまりにいち早く政宗の報告をしようと姿を探したが見当たらず、まだ呼び込みに回っている最中なのだろうと、諦めて喫茶のウェイトレスを勤めようとした時、窓際で作業していた男子生徒が「あ!」と、短く口走り……
「え!?お巡りさん!?」
「事件でもあったのか?」
「え!?どこどこ!?」
弓乃もそこに交ざる。
わらわらと窓に集まる生徒。窓を全開に開け団子状になって身を乗り出し、警官が校舎に入り姿を消すまで、騒ぎながら見ていた。
ガシャァァァッン!
空き教室の中に居た、家康、ひまり、他校生三人は一斉に窓側に視線を移す。
「な、なんだ!?」
「ガラスが割れ……くっ!!」
その事に、呆気に取られたのは家康も同じだったが、いち早く意識を反応させ、その隙に自分の左腕を捻じ曲げていた二人を突き飛ばす。
「ひまり!こっち!」
そして、今度こそしっかりとひまりを自分の腕の中へと引き寄せ、背中を再び取られないように、黒板辺りまで移動。
冷風で揺らめいた、
黒いカーテンの下。
派手な音の後に、カチャリとした微かな音。カラカラと開く窓音。
ジャリッ……
割れて砕けた窓ガラスの破片。その上を落ち葉でも踏みつけるように、足が降り、勢い良くカーテンが開く。
「強行突破ってやつか?」
「ベランダ移動はなかなか、肝を冷やしたぞ」
現れた二人は、まるで他人事のような呑気な口調にも思えたが、決して表情も心も穏やかではない。
「明智先生!秀吉先輩!」
窓から現れた光秀と秀吉を見て、ひまりは我が目を疑ったあと、遅れて安心感に満たされた。