第231章 天邪鬼の愛〜中紅花〜(18)
くまなく広がった深い紺色の空の下。
文化祭、真っ只中の昼間にも関わらず、道路からはサイレンが鳴り響いた。猛スピードで学園の方角に向かうパトカーは、歩道を歩いていた三人の女子高生とガードレールを挟んで、スライド。
「ねぇ、ちょっと歩くの早いよ!サクラ!」
「ってか、元彼に挨拶なしで帰っていいの?」
地元で人気のお嬢様学校。人気が高い一つの理由は、清楚感溢れたデザイン性の高い制服。形は一般的なセーラー服だが、襟元、リボン、スカートの素材と柄が統一。
「いいの」
水色チェックのスカートが、立ち止まりゆっくりと後ろに振り返ると……
「あんなに声上げて取り乱す姿なんて……はじめてみたから」
素敵な人見つけたみたい。
肩のあたりでふわりとした愛らしい髪を靡かせ、またスカートをくるりと揺らした。
門前に停車した、一台のパトカー。
バタンッ!
生徒が放課後、せっせとこの日の為に製作した手作り感のぬくもりも含まれた、華やかなゲート下を制服に身を包んだ警官が二人潜り抜けた。
(え???)
グランドで焼きそばの販売をしていた副部長。刑事ドラマのシーンさながら、流れるように昇降口に向かって行く警官を見て驚く。
「ちょ!おいっ!あれって!」
近くにいた男子生徒が、ひっくり返ったように仰天して、二階の校舎に指をさせば……
(な、何やってんのよ!)
休憩時間を過ぎても戻らずにいた、ある一人の姿を見て、目を丸くした。
勢いのまま、横に開いた扉。
「ごめん!!黙って抜けてっ!ってか、ひまりいる!?」
顔の前で両手をパンッ!と鳴らす弓乃はキョロキョロと首を左右に動かす。手を下ろしながら、バンソーコが貼られた小指。その指に向かって肩からスルスルと手を滑らせ、最後に触れた。