第230章 天邪鬼の愛〜中紅花〜(17)
私だって強くなりたいんだよ?
いつまでも、
守って貰ってばかりじゃなくて。
「あんたらが恨んでいるのは、俺なんでしょ。……ひまりは、関係無いはずだ」
背後から胸に回った両腕。
引き裂かれて、露わになった下着を隠すように家康は私を引き寄せて、冷たい手をむき出しの肩に置く。
ーーくくくっ。捻くれているが、本質は……一本気な男だからな。
真っ直ぐな想い。明智先生は特に私にはそうだって。そう言って、口端に笑みを浮かべた。
ーー往生際の悪いガキだが……時にはその諦めの悪さが、強さに変わる。
負けず嫌い。平然とした態度の中に隠れた野心は、家康の心の武器だって。
織田先生は何処か嬉しさを含んで、でも目は何処か遠くを見てた。
皆んなが知ってる。
皆んなが認めてる。
家康の強さを……
そして、
裏腹な心に隠された優しさを。
「そんなに大事か?その女が?……まぁ、そうだろうな。弟がずっと欲しかった勲章を……その女の首にかけるぐらいだからなっ!!」
ガッ!……ダァァンッ!!
やり場のない怒りを当たり散らすように、ぶつけた声。
私は叫び声を上げる間も無く、足元を目にも見えない速さで何かがサッと横切り、背後から響いた騒音。
その正体が、さっき家康が投げつけた椅子で……何が起きたのかちゃんと理解したのは、目の前にいる体格の良い男の人の片足が、床から離れ、伸びているのを見てから。
(勲章って……も、しかして…)
秋季大会の優勝メダルのこと……?
家康が付き合った、
一ヶ月記念にって私にくれた?
ずっと、この人達に浮かんでいた疑問。
その背景が薄っすら見えはじめた時。
「それを見た弟はな……二度と弓が握れなくなるぐらい、屈辱を……お前も、今から味わえ。大事な物を失う辛さを、な」
「きやぁぁぁ!」
「触るなっ!!」
無理やり私達を引き離そうと、
伸びてくる腕。