第230章 天邪鬼の愛〜中紅花〜(17)
ゴクリと息を飲み込む。
ただ、声を震えないようにするだけ。
それだけなのに
……それが、こんなにも難しい。
なのに……
ーー家康の弓道の強さは、見せない所だ。焦り、不安、重圧、静寂した空気と一体になるように、研ぎ澄ます神経をあの一瞬の間でつくる。
見せない強さ。秀吉先輩は、家康はあえて見せていないんだって……。
緊張していない訳が無いって。
緊張してるから、的が中れるって。
(秀吉先輩はあったかい笑顔で、そう話してくれた)
ーー家康先輩は、努力家です。決して見せませんが。とても私では真似できない。
努力とは何か。三成くんは、それを知った上で家康は努力をしてるって……。
必ず報われるとは限らなくても。それを理解して続ける努力は、凄いって。やみくもにするんじゃなくて。地道な積み重なりの賜物だって。
(三成くんは真剣な瞳を微かに見せた後、いつものように微笑んでて……)
ーーっとに。放っておくと何でもすぐに、一人でしようとするからな。
強い責任感。面倒臭いが口癖でも、強い信念はしっかりと家康は持ってるって呟いた政宗。
ただその反面、一人で背負いこんで。自分を気づかない内に責める時があるからって。
(親友として……いつも、その事を心配してて…)
今だってそう。
絶対、立ち上がるのも辛いのに……
「俺はどうなっても良い」
(ほら、すぐそうやって……)
「ひまりには、手を出すな」
何でも自分一人で。
また、自分のこと大切にしないで。
無理ばっかりして。
私を腕の中に戻すから……