第230章 天邪鬼の愛〜中紅花〜(17)
廊下に硬い靴音を響かせ、空き教室に続く廊下を走っていたのは……
「はぁ、はぁ……っ」
「先生らは向かってんのか!?」
他校生を引き連れた、三成と政宗だった。息を切らし頷く三成。グランドで声を掛けられた他校生からある事情を聞き……
「恐らく私達同様、向かわれて……」
携帯で信長に連絡を入れていた。
「ったく。あのバカ!どうせ一人でっ!」
政宗は舌打ちして、走る足を速める。
弓乃と教室に戻る途中、他校生を連れた三成と階段付近で遭遇した政宗。何か深刻な雰囲気をすぐに嗅ぎつけ、弓乃には先に教室に戻るよう伝え、三成から事情を聞き、今に至る。
それは、三成も同じ。敵地に足を踏み入れたように険しい顔をして声を掛けてきた他校生から何かを察し、副部長には話を聞かさないように、その場を離れていた。
文化祭で浮かれた生徒が多数の中、
五人は動き出す。
そして三成から連絡を受けた信長は、職員室から空き教室の鍵が無くなっている事に気付き、光秀と秀吉にあることを指示。
「俺は、正面から行く」
あくまでも冷静な表情、声音でそう信長は二人に告げたが……
(下らん言い訳などすれば、手加減など一切せん)
文化祭前にワックス、磨きのかかった廊下に響かせた靴音は早々としたものだった。
そして、空き教室の扉前に居た信康。
ひまりの声を聞き……
(……咲き始めたか)
喜びとも悲しみとも取れる、表情。それを浮かべたかと思えば、複雑な感情を胸に抱き、形の良い薄い唇をきつく結んだ。