第228章 天邪鬼の愛〜中紅花〜(15)
夏の大会時に、家康に殺虫剤を噴射した二人らしき他校生を見たと、秀吉から聞き……
「先ほど、もう一人いた。横顔で一瞬だったが……決勝戦に出場した選手に似ていたような気がするが……」
光秀は、そこで口を閉ざした。
見間違いかもしれない、それに他校生は他にも溢れるほど文化祭に訪れている。
(確かあの夏の大会後、廃部になりかけたと聞いている。しかし、家康は警察沙汰にはせず、織田先生もその意思を尊重して手は回さなかったはずだ……)
ただの一般客として普通に来ていても、別に不自然ではない。
しかし、何かが引っかかり……そのまま、信長にコールを鳴らした。
その少し前。
空き教室前で、合流した三人。
職員室で無断で拝借してきた鍵を使い、周りの様子を確認して中へと入る。
扉が閉まった後。
曲がり角に隠れていた信康は、足音を忍ばせ、聞き耳を立てた。
「とりあえず、白いドレス着てんのはわかったぜ〜」
「徳川と一緒に、模擬店の呼び込みしてしているらしい」
聞いた情報を、二人は話す。
「離れたタイミングを狙うかだな」
「ってか、徳川だけでよくねえ?」
「こっちは、三人だしな」
しかし、体格の良い男は頷くことは無い。
「弟が感じた屈辱は、ちょっとやそっとでは償えないからな。大事な物を奪われた……なら、徳川の大事なモノを奪ってやるだけだ」
不機嫌さを凝縮して、
凄みのある声が空き教室に響く。
信康はその声と、扉に近づく足音。
そして……
パタパタとこっちに向かう、もう一つの足音を聞いてその場を離れた。
「ん、ん、んーっ!!?」
ブレザーを剥ぎ取られ、空き教室に連れ込まれたひまり。
信康は、左手に拳をつくり……
身を隠していた壁に、力強くあてた。