第228章 天邪鬼の愛〜中紅花〜(15)
人混みをかき分け、
少し前に走り去ってしまった弓乃。ひまりは見えなくなった後も、暫く心配そうに見つめていた。
そして、同時刻。二人に気づかれないよう、人混みに紛れ、俯き加減で後ろを静かにつけていた信康。
前方から……歩いて来た集団を見て、更に身を隠して廊下を歩く。
「プリンス様〜。私、グランドのクレープご一緒に食べたい」
「だーめっ!次は、私のお願い聞いて貰う番だから!」
「こらこら。順番に行くから、喧嘩は禁止だぞ」
秀吉はその集団の中心で愛想を振りまき、取り巻きの女子の要望を、順番に聞いていた。
学園一の人気者。秀吉がいるクラスは、グランドで焼きそばを販売を行っていた。しかし、小さなテントの中にクラス全員は入れない。それぞれ作業、宣伝、会計などの担当を持ち、午前部と午後部の二つに分かれ、自由行動時間もそれに合わせて、分かれていたのだ。
「にしても、すげー人数」
「俺らの学校は、文化祭が一般公開じゃないからな」
(あの二人……。それにあの制服は確か……)
他校生の二人と、すれ違った秀吉。
足を止め、振り返る。しかし、もう既に人混みに紛れていて、姿ははっきりとは確認出来ない。
(念の為、明智先生に連絡しておくか)
弓道部顧問である信長に連絡しようと考えたが、しかし担任を受け持っている以上、多忙だろうと判断。副顧問であり、保健教員である光秀なら迷惑にならないだろう。そう考え、携帯を取り出す。
ブッーブッー。
白衣のポケットに振動。ちょうどその頃、保健室で男子生徒の手当てを済ました光秀。携帯に表示された名前を見て、画面に指を滑らせた。