第49章 「恋の和歌集(13)家康様編」
真っ暗な部屋の中。
停電になる前、確かに重なった唇。
でも、それよりも雷が落ちたことにパニックを起こした私は、気が付けば家康の腕の中に居た。
(心臓の音……)
耳に伝わる、家康の心臓の音。
私が着てるパーカも、家康が着てるシャツからも部屋の中も、全部家康の香りで包まれていて……。
(思わず、抱き着いちゃった///)
停電と雷で驚くなんて、織田先生に子供扱いされるのも無理ないかも。
(また、家康に甘えて……)
嫌だよね。普通。
好きでもない子に抱き着かれたら。
離れないと。
「ご、ごめんねっ。びっくりしちゃって!」
パッと家康の背中に回した手を離す。
「このままでいい」
再び隙間なくくっ付く身体。
怖いんでしょ?と優しく聞かれ、私は迷いながらも素直に頷く。
「ブレーカー、上げに行かないの?」
「落雷だと、復旧するのに時間掛かるし」
「何か、昔もこんな事あったね?」
小学校低学年の時。
学校が休みになった台風の日に、雨戸閉めて二人でこっそりこの部屋で遊んでて、そしたら停電して大騒ぎして……。
「布団被ったまま、家康ずっと手に……ふふっ」
「……忘れたし」
嘘つき。と私が言うと、家康は大事なことは忘れてる癖に、どうでも良い事は覚えてるんだ?と言われ、
大事なこと?そう、聞き返そうとした時、家康はベットの方に片手を伸ばして、何かを掴んだ。
フワッ。
頭上から柔らかい布団が降りてきて、
「……懐中電灯持ってないけど」
あの時の再現。
暗闇に慣れた目に、家康の笑顔が映った。
(ほら、ちゃんと覚えてる)
幼馴染の私達には、二人だけの思い出が沢山ある。
いつまでも続いて欲しい。
でも……私はスッと身体を離す。
「ねぇ、家康。……何で、彼女作らないの?」
「………何で、そんなこと聞くの?」
「私が先に聞いたのに」
やっぱり、教えて貰えないかと軽く息を吐いた時。