第227章 天邪鬼の愛〜中紅花〜(14)
蹲っていた一人が……
よろよろと立ち上がり、
黒板近くにあった物を掴む。
家康の頭上に、影。
その影の正体が何かわかり、
ハッと目を開いた時……
(やめてーーっ!!!)
涙が弾けながら床に落ちた。
「よくもっ!」
「声、耐えろよ」
それが一気に振り落ちる……
ひらりと黒いマントが揺れ……
ガッ!!
「うっ!!!」
「んんんっ!(家康っ!)」
寸前で反応して横に避けた身体。でも、わずかに間に合わなくて、椅子が家康の肩を強打。
肩を押さえ、片膝をつき、
苦しげな声が漏れると……
「……罰だな」
銀色の刃先が……
胸元の真ん中にスッと降りて……
「んんんっーーー!!
(いやぁーーっ!)」
突如、切り引き裂かれたドレス。
その線から、まるで血が流れたように……一面に数えきれない小花が咲き誇った、真っ赤なブラが露わになった。
「……案外、色っぽいの着けてんな」
可愛い顔して。
その薄笑い声に、すっーと神経が凝固したような気味悪さ。歯が噛み合わないほど、顎がカチカチと震えだす。
普段、滅多に着けない赤色。
まだ、一度も家康にさえ見せたことがない。
こんな形で……
家康だけじゃなくて、
他の人にも見られるなんて……
生贄の花嫁。
ーー折角だからさ!赤色の下着にしなよ〜。
ーーえ?どうして?
ーー生贄感を表現!文化祭の後、部活ないしさぁ〜誘われるんじゃない?
昨日の帰り道。
ーー明日。文化祭で部活ないから。
……うちに寄ってきなよ。
家康の夕陽に照らされ、少し赤く染まった横顔。それを思い出して、小刻みな身震いが、爪先さら頭のてっぺんまで伝わり……
(い、やだぁ……うぅっ……)
そこに突き刺さる、家康以外の視線をどうにかして、回避したくて、身体を必死に捩りもがく。