第227章 天邪鬼の愛〜中紅花〜(14)
スッと、
扉が横にスライドする直前。
部屋の隅に連れていかれ、身を隠すように、端に寄せられた机の横に座らされ……
「騒ぐな。後でたっぷり可愛がってやるからな」
「んっんっ……」
後ろから抱きつかれ、背筋がゾッとする。今から起ころうとしている事を想像した瞬間。とても現実とは受け止めきれず、手足の感覚が鈍い。大柄な男に抱きしめられている感触も、どこか遠く感じて……
(家康っ……!)
意識はハッキリしているし、思考もクリアなのに、感覚だけが低下している。家康以外に、触れられていると思うだけで、自分の身体なんて思いたくない。
でも、一番辛いのは……
「ひまりっ!」
普段なら、用心深いのに。
いつもなら、
慎重に入ってきそうなのに。
私の為に、冷静さを失くして……
「……残念だったな」
「背後から頂くぜ〜」
ドカッ!!
「っ!!」
家康がここに来てしまったのが、
一番辛い。
「……っ。ひまりは、どこだっ!」
再び消えた光。
ガチャっと鍵がかかる音。
「(家康っ!家康っ!)」
声にならない声で、必死に呼ぶ。
バキッ!ドカッ!と、続く鈍い音。
拳をぶつけたり、間をとったりする足音で、姿が見えない家康の動きを知る。
「ぐっ!……おい!後ろに回れって」
「……ッチ。ひらひらと」
例え相手が二人でも、家康は強い。
今までも何度か、助けてくれた。
小柄な方でも、しっかり鍛え抜かれた筋肉。何よりも頭が切れるから、殴り合いになっても、瞬時に判断できる所が、家康の強さの秘訣だって、織田先生が前に言ってた。