第226章 天邪鬼の愛〜中紅花〜(13)
ざわめく廊下。
俺の声はそれでも……
「どこでですか!?」
よく響いた。
自分でも、
何でこんな取り乱してんのかが……。
胸騒ぎがするのかが……。
まだ、見えない中。
教室から出てくるクラスの女子。
「あ!先生!今、喫茶側の人手が全然足りなくて、困っています!」
「四人も一気にいなくなって……」
そして、廊下でプリンの販売していた一人が……
「信康くんなら、弓乃が飛び出してきた少し前ぐらいに、他校生に廊下で何か話しかけられてたよ」
「徳川くんと、間違われてたっぽかったよね?」
嫌な予感が突き抜けるように走り、
「急いで、ひまりを探せ」
織田先生の言葉が言い終わるよりも先に、俺は走り出す。
「徳川」
背後から、神木に呼び止められ。
「この、ブレザー。君のじゃない?」
空き教室前に……
落ちてたんだけど。
差し出されたブレザー。
手を伸ばして、受け取る。
(ひまりっ!!)
温もりなど一切残っていない、冷たいブレザー。それを、ぐしゃと掴み……
普段の用心深さなんか、あっという間に消え去り、真っ先に空き教室へと向かった。