第226章 天邪鬼の愛〜中紅花〜(13)
秀吉先輩は一応、快く引き受けてくれ、連絡するか俺が探していることを伝えると言って、集団の輪の中心に颯爽と戻っていく。
俺はそのまま、教室へ直行。
携帯は後ろ側のロッカーにしまってある。いちいち、おばけ屋敷側から入るのは面倒だけど仕方ない。
すると、目前で自動的に開いた扉。
黒い幕で覆われた入り口から……
「……家康か。ひまりは、どうした?」
同じ格好をした、ヴァンパイア。
織田先生が出てくる。
ってか俺を見るなり、開口一番にひまりの名前がぽんと出てくるとか。どうなのそれ。今、思い出せば……秀吉先輩もそうだったし。
「……今、連絡しようとしてる所です」
いちいち説明して煩く言われるのが面倒だと思い、それだけ答えれば……
「ふっ。どうせ下らぬ、喧嘩でもしたのであろう?」
「してません。それより主役が出てきて良いんですか?」
見透かしたような含み目から視線を逸らして、即否定。
そして話題をあえて逸らす。このお化け道の最後は確か、口から血を垂らした織田先生が、赤いベルベット素材の椅子に座り「俺に生き血を吸われたいか」とか、何とか台詞を言って怖がらせるらしい。呼び込みしている時にひまりが、そう話していた。
しかし、暫くすると織田先生は何かに気づいたように、軽く目を開き、険しい顔を作ると……
「……少し気になることがあってな」
「気になること?」
急に真剣な色を落とす表情と声に、
俺は眉間に皺を寄せ尋ねれば……
「夏の大会にお前の目に、殺虫剤を噴射した二人を覚えておるか?」
「何ですか藪から棒に。まぁ。はっきりとは覚えていませんが、薄っすらとなら……」
「そいつらと、決勝まで勝ち上がっていた男。三人の姿を見たと……光秀から連絡が入った」
奇妙な焦燥に駆り立てられる。