第226章 天邪鬼の愛〜中紅花〜(13)
けど、政宗も急いでいるのか……
「悪い。見てねえ」
去り際に、ポンと肩を叩き「また、見たら連絡してやる」そう去り際に告げて、階段を下りて行った。
(そう言えば、政宗もついさっき教室を出たばかりだって。……言ってたっけ)
クラスのヤツとした会話を思い出し、俺は重い息を吐く。冷静になって考えれば、そんな僅かな時間でひまりを見ている可能性は低い。
(っとに。ひまりのことになると)
自分でも呆れるぐらい、取り乱す。
とりあえず政宗が一階に降りたなら、
俺は別の所を探した方が良い。
近くの壁に背中を預け、
思考を巡らせる。
あの時。方向的に考えればひまりは、教室に向かったはず。恐らく、小春川の事を心配して。それこそ、さっき会った政宗にでも尋ねようと……。となると、教室に向かう途中に誰かと遭遇して、何処かに移動した?
それが一番、しっくり来る。
別に、それが神木だと決まったわけじゃない。普通に仲良い女子とか、一般で来ていた知り合いかもしれない。ただ、明らかに神木がひまりに好意を寄せているのは、誰が見てもバレバレ。それは、転校してきて早々から嫌でも感じるし。
「はぁー……」
付き合っても、
俺はそんな心配ばっかしてる。
(……ほんと。どっかの誰かさんは、全く気づいてないけど。……とりあえず携帯。出るかあやしいところだけど、掛けてみるか)
これだけ人が多いと、普通に探しても簡単には見つからない。騒がしいから、携帯の音や振動に気づくかもあやしい……特に、ひまりは何かに夢中になると、携帯なんてそっちのけ。
(あと、案外。怒ってて出ないとか)
表情はあまり見えなかったが、背を向け、俺の呼び声を無視して、走って行ったぐらいだから……その可能性もありそう。
(ってか、嫉妬してとかだったら……それは、それでかなり嬉しいんだけど)
普段滅多に見せない一面。
そうだったら尚更、早く見つけたい。