第226章 天邪鬼の愛〜中紅花〜(13)
教室の扉に貼られた、
一枚の張り紙。
『こちらは、出口。入り口は後ろ側の扉になります』
今は、出口になっている喫茶側。
取っ手のくぼみに手を入れ、横に引く。ガラガラッ。
「おっ!ちょうど良いところに!」
「急に四人も居なくなって、大忙しだ。徳川も手伝えよ」
入るや否や、声をかけてきたクラスメイトの二人。制服のネクタイを蝶ネクタイに変え、ウェイター風の格好している。
「無理。ってか、ひまり来てない?」
「姫は、来てねーぞ。小春川が出てってから、サッカーバカは出てくしよ。ついさっき、政宗は出てくしよ。その上、神木もいつの間にかいなくなって……」
「神木も……」
その名前を聞いた途端に、嫌な予感。
「お、おい!手伝え……って、もういねーし」
俺は教室に入って一分経ったから経たないかで、また廊下に戻る。
(もしかして、一階に降りたとか?)
神木と、どっかで一緒に居るかもしれない。そう思えば思うほど、俺の足は早まる。一階に降りる階段近くの曲がり角に差し掛かった時。
ドンッ!
「っ!!」
「いっ!!」
何かが視界に入る前に、
誰かと肩がぶつかる。相手も走っていて勢いがあった所為か、身体が衝撃で軽く後ろによろめく。
足に力を入れ、ぶつかった肩を抑えて顔を上げれば……
「……何だ、家康か」
驚きを表情に浮かべた、
政宗が立っていた。
「……政宗。……って!ひまり!ひまり見なかった!?」
俺は慌てて、
ひまりの居所を尋ねる。