第225章 天邪鬼の愛〜中紅花〜(12)
露わになった太腿。
大きく開いた胸元。
布を切り刻み、所々に作った切り口。
そこからは、ちらちらと肌が露出。
生贄の花嫁をイメージした衣装。
それが、その意味を現実化したみたいに、今……まさに私は他校生三人の生贄に……
「ほらさ〜暴れると、ますます際どい格好になるぜ」
「徳川に普段、どんな風に可愛がられてるのか、教えてよ?」
(助けてっ……)
きつく目を閉じると、いつの間にか浮かんでいた涙が顔を伝う。
目の奥に浮かぶのは、家康ただ一人。
(あの時……っ、…あ、の時……)
何で、つまらないヤキモチなんて妬いて側から離れてしまったのだろう。ゆっちゃんの事も心配なのに。何で、こんな事に……。
耳を澄ませば壁越しから聴こえてくる、文化祭に盛り上がっている、生徒複数の声。もしかしたら、ちょっと叫んだぐらいでは聴こえないかもしれない。
もし、もし……
家康がここに来たら……
ーー安心しろ。本当に可愛がってやるのは、徳川が来てからだ。
それが、
どういう事を意味しているのか……。
嫌な想像しか浮かばなくて……
理解した途端に……
(い、えや……す……っ……)
心が押し潰されそうになる。
塞がれた口の歯の隙間から、息が漏れ出し、涙が目を焼くほど熱く、顔を横に向ければ、耳たぶからポタポタと冷たい床の上を濡らす。
「……泣き顔も、唆るな」
「っ!!」
覆い被さっている人の、
息が首筋を掠めた時……
ダァン!!ダンダンダンッ、ダンダンッ!!
壁の向こうから、この空き部屋に何かを叩きつける騒音が鳴り響いた。
「な、なんだ」
「も、もしかして、徳川が来たのか?」
「……見て来い」
私の腕を抑えていた二人は驚き、拘束を解くとこそこそと話す。そして立ち上がり、ゆっくりと扉へと向かう。
(今なら……!)
涙でぼやけた視界。
そこに映り込んだ、
扉が開いたままのロッカー。
ドンッ!
自由になった両腕。そこに渾身の力を込めて、覆い被さっていた人が気を緩めている隙に、胸元を突き飛ばす。
「お、おいっ!」
震えそうな足を動かして……
素早く……バンッ!
ロッカーの中に入り、扉を閉めた。