第225章 天邪鬼の愛〜中紅花〜(12)
腕を捕まれ、肩を軽く押された瞬間。
背中にベッタリついた固い床。
ぶわっと、
埃が宙を舞い上がる。
「ちょっと、触らせて貰うだけだから、安心しな〜」
軽い口調で話すのは、さっき廊下で前を塞いできた一人。今は、暗くてわかりづらいけど、確か髪色が明るくて、制服を着崩していた人。
「そうそう、俺ら男子校だから飢えててよ。……君。本当に可愛いね」
私の顔を覗き込んだ、もう一人。細身で背が高い、中性的な顔立ちの人。話しながら、頭のてっぺんから爪先へと、視線を動かすのが見えた。まるで舐めるように、じっくりと見た後……
ゴクッ。
喉が鳴る音が、近くから聞こえた。
一気に、
吐き気に似たものが込み上がり……
(家康…っ…)
自分の置かれている状況が、いかに深刻な事態なのかを把握して、ガクガクと身体中が震えだす。
「安心しろ。本当に可愛がってやるのは、徳川が来てからだ」
そう耳元で低い声で囁く、
リーダー格っぽい人。
スッと顔を上げ、
私を見下ろしながら不敵に笑う。
彫りの深い顔立ち。
何処かで見覚えがある気がした、
その一瞬……
覆い被さられ……
「逃げんなよ」
「いやぁぁっ!!」
あまりの恐怖に悲鳴を上げ、
今度は全身が凍りつく。
「触らなっ…!!……ンッ!!」
再び、口を塞がれ……
脚と脚の間に、滑り込む足。全身の血が一気に冷えわたって、寒気立つ。
押し倒された拍子に、後頭部を軽く打ったけど……今はそんな痛みを感じるより先に、次々と自分の身体に伸びて来る腕を、必死に払う。
「ンッ!んっ、んっ!(家康っ!家康……っ!)」
しかし、両側に回り込んだ二人に腕を一本ずつ捕まれ、自由が呆気なく奪われてしまう。
女と男ってだけでも、
力の差は一目瞭然。勝てるはずない。
その上、三人なんて……
(でも、絶対…っ、…家康以外になんて…)
触られたくない!
もうその気持ちだけで……
足をジタバタ動かせば、ますますスカートの裾が捲りあがり……
ショーツが、あと数センチで見えてしまいそうな際どい位置で、何とか引っかかる。