第225章 天邪鬼の愛〜中紅花〜(12)
薄暗い室内。
目の前に立つ三人の影。
その中の一人。……多分、体格のシルエットからして、私を後ろから拘束していた人。その人が、スッと屈伸するように脚を曲げ、顔を近づけてくる。
「騒ぐなよ。騒いだら……この状況ならわかってるだろうな?」
「い、……一体!な、何の用ですかっ」
この状況。
そんなの分からない。
急に口を塞がれ、拘束されて、訳のわからない会話を目の前で繰り広げられて……。その中で唯一、わかっているのは私を使って、家康をここにおびき寄せようとしている。それだけは、いくら疎い私にでもわかった。
(家康を絶対にここに呼んではいけない。そんな気がする……)
この人達の様子から察して、良い理由で、用があるようにはとても思えない。
「今頃、必死に探してるかもな」
「い、家康は、ここには来ませんっ」
しっかりと顔を上げて、
自分なりに精一杯の勇気を使い、お腹の底から声を振り絞ったつもり。だけど、声を聞きつけられて、もし家康がここに来てしまったら……そう頭に過ぎった事も関係して、出てきた声は思った以上に小さい。
すると、三人の誰かがひゅーっ。と、軽く口笛を鳴らすのが聞こえたと思ったら……
「良いね〜。弓道の大会で優勝はするは、こんな可愛い彼女に思って貰えてな」
「ってか、わかってる?徳川の心配する暇なんて、今の君にはどこにもないんだけどさ〜〜」
屈み込んでいた人の背後立っていた二人。じわじわと、薄ら笑いをして近づいてくる。
「なぁ。待っている間……ちょっとぐらいなら、良いだろう?」
「こんなそそる格好……。見てるだけでマジやべぇ」
ようやくぼんやりと、暗闇に慣れてきた目。まだ、三人の表情は薄っすらしか見えないけど、鋭い視線がミニ丈のドレスしか着ていない身体に突き刺さるのを、嫌でも感じて……
ゾクッ。
恐怖が突如、襲う。
額から、少しずつ全身に汗が流れるような不気味さ。
「こ、来ないで………」
床についた両手を交互に動かして、震える両足……感覚があまりないまま、同時に動かし、尻餅をついた形で、じりじりと後退しようとすれば……
腕をガッと捕まれ、
元の位置に引き戻された。