第225章 天邪鬼の愛〜中紅花〜(12)
大きな物音の正体。
ドンッ!
それは……
「くっ!!」
腹部を蹴られ、
そこを抑え蹲る金色の髪。
「んんんっ!!!」
必死に体を動かし、手を真っ直ぐに伸ばしたのは、白いドレス姿のひまり。
(家康っ!……だ、れか。誰かっお願いっ!!)
心の声で必死に助けを呼ぶ。
背後から口元を塞がれ、手も足も出ず。目から溢れんばかりの涙を流す。
「暴れるな。触って欲しいのか?」
「ひまりに触るなっ!」
立ち上がった瞬間。
ドカッ!!
「声出すな。つっただろが!」
「っ!!!」
同じ腹部に、今度は強めの蹴り込み。
「声を出した罰だな。……次は、そろそろ直接触って……」
「んんっ!!んんっ!!」
後ろで拘束された腕。
それが、ガッチリと腰元に回り……
「……良いカラダしてんな」
吐息が耳にかかり、青ざめる。
スルスルと胸元に向かって、這い上がる。ゆっくり、ゆっくりひまりの恐怖心を煽り……
(くっそ……!!)
家康の怒りを煽る。
政宗達がいる、真上の空き教室。
その床の上で、黒いマントが崩れ落ちたように、転がる。その周りに他校の制服に身を包んだ二人。
そして、扉の向こうに……
甘栗色の髪。
時間は、これの少し前に戻る……。