第224章 天邪鬼の愛~中紅花~(11)弓乃×政宗様編
告白予行練習とか、
ほんと全然意味がない。
可愛く「好き」とか、言う練習。
何回も何回もして、男の子がグッとくるような笑顔を何度も何度も、鏡の前で練習したのにさ。
ネクタイ引っ張って。
バカ連呼して、私にしときなとか偉そうな言い方して……
「政宗が好きなんだからっ!」
極め付けに、感極まったように泣いて。きっと、酷い泣きべそ顔してる。そんな顔で、こんな至近距離で叫ぶとか……もう練習めちゃめちゃ。
でもさ。
でも、これがそのまんまの私。
嘘偽りない私。
飾らない私だから。
そのまんま、受け止めて欲しい。
足元に落ちた赤いリボン。
すごい早さで拾い上げて……
政宗が返事をするより先に……
「お、おい……」
太くてゴツゴツした小指。
背伸びをして、そこにリボンを滑り込ませ……
キュッ!!
……固く結ぶ。
「ヒロインになりたい……っ」
そして、まだ結んでないリボンの端っこを持ったまま……
「政宗のっ……!」
政宗だけのヒロインにっ!
精一杯の勇気と、素直な言葉。
そう告げて、顔を上げた瞬間。
「……ったく」
引っ張られたリボン。
前に体が傾き……
伸びてきた手に、
怪我した方の手が捕まる。
「……上等だ。なれよ」
「え……」
青い瞳が細くなり……
「……その代わり、覚悟以上の覚悟しろ」
政宗は捕まえた私の手を口元に近づけ……ペロッ。乾き切った赤い血を、躊躇なんて一切なく舐める。
「な、何やってんの!汚いしっ!」
「汚くねえ。……惚れた女のならな」
惚れた女。
その言葉に、頭がもう真っ白。珍しくどっかの可愛げあるヒロインみたいに、キョトンとして瞬きを数回繰り返す間に……
シュルッ。小指に回されたリボン。
あっと言う間に、固く結ばれ……
結ばれた、赤いリボン。
そこに視線を移動させると……
頬にあったかくて頑丈な手が触れた。
繋がった赤いリボン。
まだ、全部の実感が湧いてくるのが遅れている私の思考。