第224章 天邪鬼の愛~中紅花~(11)弓乃×政宗様編
決意をしたような強気な瞳。
その癖、奥は不安げに揺れ、悩ましいまでに、柔らかく女らしい表情を浮かべた弓乃。
風に揺れる。肩まで伸びた髪。
はらりはらりと、
仄かに上気した素顔にかかる。
(早く、言えよ。……こっちから、食っちまうぞ)
そんな好意を全面にで剥きだした、バカみてえに可愛い顔。あんまり長いこと見せてると、俺のが我慢ならねえ。
(……都合良過ぎか)
言わせなかったのは、俺自身。
弓乃の本気に気づいたからこそ、あえて言わせなかった。来るもの拒まずにいた、俺にとって女からの「好き」は何処か、薄っぺらいもんに思えた時期があったからな。
(言わせなかった時点で、俺はお前を……)
サクラの時は、
お互いそれを伝えなかった。
ひまりに俺は言ったが、
それは届かなかった。
(ある意味、お前が初めてだな)
正真正銘。
両思いってヤツは。
今は、言わせたくて溜まんねえ。
今は、急かしたくなる。
(……聞かせろよ。お前の本気)
窓枠に肩肘を突く。
少しでも、
目線の高さを合わしてやろうかと、
身を少しかがませた瞬間……
固く結んであった口が解け……
「…………バカ」
俺は、耳を疑った。
「……あ?」
予想外過ぎて呆れるほかない。
(こいつ……)
思わずやられた言うように、開いた口が塞がらず、頭を抱えた時だ。
グッとネクタイが引っ張られ……
「……バカバカバカバカッ!!」
「おいっ!いい加減に……っ!」
さんざん値打ちを持たして、
開口一番がそれかよ。
そう、突っ込む前に……
胸が轟く。
俺の視線を縫い付けた……
一瞬で涙で濡れた顔。
「これ以上っ……これ以上……っ」
弓乃は透明の雫を流し、
必死に声を上げて……
赤い目を更に近づけ……
「私ばっかり、好きにさせないでよっ!」
バカッ!!
「っ……!!」
「私にしとき、なさいよっ……こ、んなにバカみたいに…っ……」
政宗が好きなんだからっ!
とっくに俺は、
こいつに奪われていたらしい。