第224章 天邪鬼の愛~中紅花~(11)弓乃×政宗様編
文化祭の午前中。
昼ごはん時に近づいた十一時過ぎ。遠くから賑やかな声が届く。
体育館に続く通路。
一人や二人通っても、来てもおかしくない。そんな今……
夢のような時間……とかって、多分。
今の私の状況にパズルのピースみたいにぴったりと、当てはまる気がする。
唇を塞がれ、驚いてピクリと反応した肩。後ろから声が聴こえた一瞬……いきなり夢の中に引きずり込まれたような錯覚が起こって……
本気で、
本気で、
最初は夢かと思った。
自分の唇なのに。
最初はまるで、別物みたいに感覚があるようでないようで……
不思議な感じ。
なのに……
「残念だったな。こいつのコレは……」
唇をなぞるゴツゴツした固い、でも柔らかい部分に押されやっと、やっと、熱がそこに集まった。
(……残念。……コレ?)
その意味が頭に浸透し始めて……
「俺専用だ。…………今日からな」
俺専用だ。その言葉を告げたのは、真剣みを帯びたような、低い低い声。
でもって……
(何で…っ、そ、んな優しい声……)
今日からな。その言葉を告げた声は、胸をぎゅっと強く掴んで離さないぐらい力強くて、柔らかい声。
聴こえた声も風みたいにすり抜けそうになって、慌てて掴んで私の中に引っ張り込んだみたいに……一つになった時。
時間が動き出したみたいに、
金縛りにあっていた体が急に、自由になったように動き出す。
「ま、さむ…ね」
値打ちを持たせるわけでも、
焦らしてるわけでもないけど。
まだ、その姿を映すまで……
確認するまでさ。現実か信用できないじゃん?
だって、こんな夢みたいなのに。
ゆっくり、ゆっくり振り返った瞬間。
目が合った。
青くて澄んだ瞳と。
(もう、良い加減。言わせてよね……)
政宗が好きだって。