第224章 天邪鬼の愛~中紅花~(11)弓乃×政宗様編
真っ直ぐ行くはずだった足。
俺は、体を捻り横に向ける。
文化祭前に掃除したのか……
そこにガラスがあるとは思えねえ程、手垢、汚れひとつなく透き通った大窓。その窓枠から微かに見えた頭のてっぺん。
校舎壁と窓ガラス。
その境界線ギリギリに伸びた腕。
弓乃の姿は後頭部以外、見えねえが……サッカー部のヤツが、目を閉じたのは、はっきりと俺の視界に入り……それを見れば、あいつが壁に追い込まれ、今、何をされそうになってんのかは安易に予想できた。
本気で迫られてんの見て、
(……っとに。馬鹿は俺だな)
焦るぐれえなら。
とっとと、認めりゃ良かったと。
んなことを、
考えるより先に体は動く。
触れた窓ガラス。
多分。
三人の行動はそんなに時間差なんざ、無かっただろうな。
俺の気配に気づいて、
目を開けたサッカー部のヤツ。
抵抗しようと、腕を突っ張った弓乃。
窓を開け、
「させねーよ」
背後から、
片手で弓乃の唇を塞いだ俺。
「伊達!!」
「んっ!」
「残念だったな。こいつのコレは……」
塞いでた手をずらしながら、
親指の腹で柔らかい部分をおす。
「俺専用だ」
今日からな。
その言葉にピクリと反応した割に、それからは石になったかのように固まり、微動だにしねえ弓乃。聞こえなかったのかと、思ったが……
「ま、さむ…ね」
夢か幻聴とでも疑ってたのか。
時間をかけ……
ゆっくりと首を後ろに動かし……
虚ろげな、不安げな瞳に俺を映した。
(言わせてやる)
俺のことが好きだってな。