第224章 天邪鬼の愛~中紅花~(11)弓乃×政宗様編
廊下を突き進んでいる途中。
二階の校舎から見えた、二つの影。
体育館に続く渡り廊下。
黒いワンピースを着た茶色の髪。俯いて、赤いリボンを解くのが見え俺は足を止めた。
窓から目を凝らして、二人の姿を確認。
何か話しながら、校舎側に後退りする弓乃。その前でじりじりと迫り、距離を詰めるサッカー部のヤツ。
(ったく。気が強い割に、やすやすと迫られやがって)
俺は、一階に下りる階段を目指す。
曲がり角に、
差し掛かった時だ。
ひらりとした黒い布。
それが、
視界の端に入ったと思えば……
ドンッ!
勢い良く角を曲がってきたヤツと、
肩が強くぶつかり合う。
「っ!!」
「いっ!!」
お互い、声にならないような声を短く上げ、俺は衝撃を吸収して、片足を後ろに下げ、グラつくのを踏み止めれば……体格の差からか、目の前で軽く後ろによろめいた、家康。
「……何だ、家康か」
「……政宗。……って!ひまり!ひまり見なかった!?」
俺の姿を見るなり、藪から棒にひまりの名前を連呼して、俺のシャツを掴み居場所を尋ねてくる。珍しく冷静さを失い……まぁ、ひまりに関係していれば珍しくない姿だが。家康の眉の間に刻まれた皺。取り乱したように、荒い呼吸をして、切羽詰まった雰囲気はひしひしと感じる。こんな状況じゃなけりゃ、喧嘩でもしたのか?って、揶揄ってやる所だが。
「悪い。見てねえ」
見かけたら、連絡してやる。
肩をポンと叩く。すれ違いざまにそう告げ、階段を駆け下りる。
渡り通路に出る前にある、一階の美術室。文化祭の今日。中に、展示品や作品が飾られ扉は全解放。
(あいつ……っ)
その前を通り過ぎる前。
美術室の大窓から見えた光景。