第223章 天邪鬼の愛〜中紅花〜(10)弓乃×政宗様編
何が言いたいのか。
それは、何となくわかる。
「俺は、一番に追いかけてきた。それが、伊達の答えなんじゃないか?」
チクリと一瞬、
胸に突き刺さる痛み。
最後の心を揺さぶるように、その声は奥に入り込んだけど、また一歩下がって弾け飛ばす。
つまり下手したら政宗もまだ元カノさんに、心残りがあるじゃないかって、言いたいっぽい。確かに追いかけては来てない。今だって、普通に元カノさんと……
でも、怪我した時……
一番に、駆けつけてくれた。
バカって怒鳴りながらでも……
気にかけてくれた。
(大きな声だったし、状況でつい逃げ出したけど……本気で、心配してくれてたからこそ、出た言葉)
ーーばぁか野郎!素手で触る奴がいるかっ!
落ち着けば、
ちゃんと見えてくる政宗の優しさ。
「それもどうしても、気になったら政宗に直接聞くから」
「俺は、お前に辛い想いして欲しくないから。言ってる」
ジリジリ近づかれ、
その度に私は後ずさる。
「私は、自分の気持ちに嘘を吐くのが一番辛い」
私の為に言ってくれてるのは、真剣な表情から伝わるし、読み取れる……。けど、応えれない気持ちは、きっぱりと断ってちゃんと政宗に言いたい。
ダンッ!!
「俺だって、そんな簡単に諦めたくないからな。もう、一回良く考えて欲しい」
「ちょっと!!何すっ…!」
一歩、一歩後ずさりして、
校舎の壁が背中に近づいた時。
追い込まれて、大きな声が出た。
憧れの壁ドン。
でも、全然嬉しくない。
いきなり至近距離で迫られた体勢に驚いて、手から赤いリボンが滑り落ちる。普段から、こんなシュチュエーションに慣れていない私は、若干反応が遅れ……
気づいたら、
目を閉じた顔が目前に……
(政宗っ!!)
手を突っ張り、
キスされるのを塞ごうとした瞬間……
ガラガラ……。
背後にあった窓が、開く音。
「させねーよ」
大きな手。
塞がれた唇。
聞きたかった声が、
耳にはっきりと届いた。