第223章 天邪鬼の愛〜中紅花〜(10)弓乃×政宗様編
赤い糸。
一般的に、運命の人と結ぶ目には見えないものの事を、そう言う。それが、スパッと切れたように見えた小指の怪我。でも、逆に考えたら、今、ようやく赤い糸が出て、繋がろうとしてるのかもしれない。
(切れたって、繋がってなくたって良い。無理やりにでも、繋いでやるんだから!)
そんな前向きな考えが生まれ、
ようやく出てきた私らしさ。
頭に結んでいた赤いリボン。
それをシュルと解く。
糸より太いし、頑丈なリボン……
何でもマイナスに考えるから、見えなくなる。でも、プラスに前向きに考えたら、希望や大切な事が自然と見えて……
(私は、政宗が好き)
戻り始めた本来の自分。
フッと、斜め分けしてある前髪にかかるぐらいの息を吐いて、何かを得たようにリボンを握る。
(玉砕しようが上等!諦めの悪いヒロインがいたって、別におかしく無い!)
体育館に続く渡り通路。
ひどく冷たい風が、肌を吹く。
まだツーンと痛む鼻の奥、でも心が少し軽くなって、モヤモヤもちょっと晴れた。
自然と笑みが溢れてたのか、サッカー部のキャプテンは、不意に私の頬に触れ……
「サクラ先輩と別れてから、伊達。結構、取っ替え引っ替えしてたぞ。悪いヤツじゃないのは知ってる。だから、悪くは言いたくねーけどよ。……中三の時は、来るもの拒まずって感じだった」
「そんなの気にしない……とは、正直言えない。でも、知りたいことは本人から聞く。だから、言わないで欲しい」
ただの強がり。
でも、本音。
一歩、後ろに下がって……
耳を塞ぎたくなる衝動を抑え、きっぱりと言い放つ。
それに少なくとも、ひまりを想ってる時の政宗は真っ直ぐだった。それはちゃんと知ってる。見てきたから。横から見てたから。
でも……気まずそうに「そうじゃなくてよ」そう言って、頭をかく姿。どうも言いたいのは、そうゆう事じゃなそう。