第223章 天邪鬼の愛〜中紅花〜(10)弓乃×政宗様編
恋をするのは、
決して楽しいことだけじゃない。
それは、ひまりを見て実感した。お互いどう見ても、想い合っているのに焦れったいぐらい、複雑に絡んで……両思いになるのにどれだけ、とおまわりをしたか……
少女漫画の、王道のヒロインみたいなひまりでも……凄く辛い思いをした。
私はそれを思い出した時。
涙がピタリ止まった。
(そうだよね。……今でこそ、ラブラブだけど。あの二人だって、すんなり上手くいったわけじゃない)
ただ、ずっと真っ直ぐで、その想いが繋がったから今がある。
(だったら……)
私は大きく息を吸い込み、
ワンピースの首元を掴んでいた手を離して、裾をキュッと握り俯く。怪我した方の手、小指からは血が止まり、しゃくり声を止めて、肩を上下させ呼吸を落ち着かせ……
掴まれた手首を動かして、
離して貰う。
「小春川……」
「……人生で、初めて告白されて。正直言うとね、ビックリした」
嬉しいとか、そういう感情が湧く前にただただ驚いた。自分が人生初めて告白を決心した日に、初めてされた告白。
告白だよ?
告白……
でも、少しも……
自分の気持ちは揺れなかった。
その事にビックリして、驚いて、すぐに返事が口から出なくて……あぁ。やっぱり、政宗が好きなんだなって、改めて実感。
「……ごめん。気持ちには応えれない。例え片思いでも……ずっと片思いでも……」
真っ直ぐに想っていたら、いつか届くかもしれない。繋がるかもしれない。
でも、想ってるだけじゃなくてしっかりと、伝えないと。態度だけでは、伝えれない部分。
(一生分の素直と、勇気。政宗に使うって決めた)
それこそ、
私の憧れているヒロイン。
「多分。サクラ先輩。伊達にまだ心残りがあるっぽいぞ」
「……元カノさんのことは、政宗に直接聞く」
だから、ごめん。
私は頭を下げ、
そのまま小指に視線を落とす。