第223章 天邪鬼の愛〜中紅花〜(10)弓乃×政宗様編
ヒリヒリした痛みが走る小指。
結構、深く切ったのか……心臓の音みたいにドクドク脈が動いて、痛い。
痛い。
心も小指も。
(な、んで……っ。追いかけて来てくれないのよ……ばか…っ)
どっかで追いかけて来てくれるって、期待した自分が嫌。こんな浅ましい考えするから、私はヒロインになれないんだと……ますます自分が嫌いになる。
掴まれた手首。
振り返った瞬間……
涙がグッと込み上がって、息がつまる。拭いても拭いても、止まらない。じーんと鼻の奥が痺れるぐらい、溢れて……透明な粒が瞬きと共に弾きだされた。
「……やっぱ、お前。伊達が好きなんだな」
「くっ、……あっぁ……」
教室でのやり取りで察したのか、そう直球で言われ、嗚咽が出る。体のどこかが破れるんじゃないかと思うぐらい、その問いに返事ができないまま、繰り返す。
私は荒っぽく、ワンピースの首元を持ち上げると目元に運ぶ。ゴシゴシ拭けば、そっとそれを止められ……
「俺、伊達と同中なんだよ。部活が違ったから、そんなに絡んでねーけど。一応、さっきの……元カノ。サクラ先輩の事も知ってる」
「き、…きたく…ない…」
その名前に敏感に反応。
昨日は、正直知りたくて堪らなかった。どれぐらい付き合ってたのかとか、告白はどっちからしたのかとか、キスはしたのかなとか……気になって、気になって仕方がなくて……枯れるぐらい泣いた、昨夜の私。
でも、泣いたらスッキリして。
告白、予行練習。
文化祭の休憩時間、誘って……
一緒にグランドの模擬店、
回ったりして?
クレープ食べて、
ちょっと女の子感アピールして?
体育館裏?それとも、やっぱ裏庭?
それか、それか……
(ほんと、ばかみたい……っ)
途中でお店放ったらかして、皆んな。
頑張ってんのに。
また、一つ自分が嫌いになる。