第222章 天邪鬼の愛〜中紅花〜(9)弓乃×政宗様編
今、まさに目の前で同じ姿が映る。
それが、無意識にどっかで引っかかってたのかもしれねえ。
サクラの卒業後、中学の三年になった俺は完全に快楽主義に切り替わり、その時が楽しければ良い。そういう思考に変わっていた。
それから、高校に入り……気づけばひまりに惹かれ、目で追い、本気で人を好きなる感情を知り、欲しくて堪らなかったが……結局、俺が好きになったのは、真っ直ぐで、家康の隣で花みてえに笑う姿。
絶対に此奴はブレたりしない。
心変わりなんてしねえ。
そんな理由も少なからずあった。
都合の良い相手には、二度と勘弁だとどっかで思う自分が居たのかもな。
(……今の俺は)
どっかのバカが、頭に住み着いてる。
それこそ、さんざん秀吉先輩にぎゃあぎゃあ騒ぎだて、都合の良いこと言いやがった弓乃。
(でも、あいつの都合の良いは違うな)
俺は軽く息を吐く。
少なくとも、俺と秀吉先輩を天秤にかけたわけじゃねえ。ひまりを好きな俺に好意を寄せた。
担任の事が好きなサクラを、
俺が好きになったのと同じだ。
「政宗くんに、昨日会って。ちゃんとあの時のこと、謝りたいって思ったのと。久しぶり会って、凄く嬉しくて。やっぱりって思って……」
だから、文化祭に来たとサクラは話す。元彼。俺はあえて訂正しなかったが、正式には付き合ってはいない。
「もう、一度。やり直せないかな?」
今度はフリじゃなくて。
中途半端なカレカノじゃなくて。
サクラはそう言葉を繋ぎ、まるで答えるまで行かせないと言うように、もう片方の手でローブをぎゅっと、掴む。それを、俺はやんわりと解くと……
「中学二年の……あのクリスマスの帰り道の俺なら、その言葉に良い返事をしてやれたが……悪いな。今の俺は……」
これっぽっちも、揺れねえ。
あいつに何で、
告白を口にさせなかったか。
その理由。
良い加減、教えてやらないとな。
今度こそ、俺は教室を後にした。