第222章 天邪鬼の愛〜中紅花〜(9)弓乃×政宗様編
しかし、ひと月経った頃。
日を追うごとにサクラ自身は、変わり……
「クリスマス。デートしたい///」
一緒に過ごす内、その瞳に俺を写す回数が増えていた。彼氏のフリから、クリスマス前には普通に付き合ってるのと、変わらない関係になっていた。
つっても所詮、中学生がやるような事はしれ、普通に下校したり他愛のない話を部活中や、放課後にするぐらいだ。
そんな中、初めてまともなデートらしいもんをしたのは、クリスマス。
プレゼント交換。
中学から家の手伝いをしていた俺は、それなりの小遣いを貰い、安物でも年の割には背伸びして、ネックレスを贈った。
「可愛い……。ありがとう。大切にするね!私のプレゼント……大した物じゃないんだけど……」
少し困ったような、申し訳ないような表情を浮かべ背中から、出してきた一冊の本。自分でラッピングしたのか、赤いリボンが巻かれ、俺は表紙を見て……
「おっ!バイク雑誌じゃねえか」
礼を言って受け取る。
頭をポンと叩けば、サクラはホッとしたように笑う。雪が降る帰り道。
顔を近づければ、ゆっくり睫毛に積もった雪を落とし、閉じた瞼。
好きだ。とは、言わなかった。
サクラも俺も。
ただ……
「赤い糸。……なぁ〜んてね」
本に結んであったリボン。
それを、互いの小指同士に結んで笑った。
今、思えば淡い恋愛ごっこ。
けど年が明け、
研修生の担任と卒業が近づき……
サクラはまた瞳に、その男を映す。
それに気づいた俺は、サクラをいつの間にか自然と避けはじめ、バレンタインの日。担任にチョコを渡している姿を見て、前と同じ先輩と後輩の関係に戻っていた。
中学の恋なんざ、そんなもん。
そう自分に言い聞かせ、口にしなかった。
きっかけが、きっかけだった所為か、
冷めていくのも、驚くように早い。
卒業式の日に、
ーー途中で気づいたの!やっぱり、私が好きなのは……政宗くんだって。
色々、サクラなりに考えてはいたんだろう。クリスマスは俺と過ごし、バレンタインは担任に。自分なりに気持ちを図って、出した結論なのか……
都合の良いことを言って、人差し指を口元の黒子にあて、視線を逸らした。