第222章 天邪鬼の愛〜中紅花〜(9)弓乃×政宗様編
ガラガラッ!
「小春川!」
瞬時に反応した、サッカー部の奴。俺は、滅多に泣かないヤツの泣き顔を見た所為か、出遅れる。一歩どころか二、三歩遅れ、後を追おうとした時だ。
「政宗くん!」
サクラにローブを掴まれ、足が止まる。顔を後ろに向ければ、何か言いたげに口を動かしていた。
「あの子。もしかして、彼女さん?」
「……何で、そんな事を聞くんだ?」
そんなんじゃねえ。そう言うのが、癇に障り、逆に聞き返す。サクラは昨日も一緒に買い物をして、揃えのような格好から見てそんな気がしたと、答えた。
「………ほら、放せよ」
アイツ。
短距離はバカみてえに速い。
すぐに見失う。
「私、政宗くんに言いたいことがあって!あの時のことを、謝りたくて!」
「別に謝ることじゃねえ」
大した事じゃない。それに、今更だと俺は答えるとサクラは、あの時と同じように……
「……やっぱり、私。政宗くんのことが」
大きな瞳を開かせ、口元の黒子に曲げた人差し指をあて、視線を横に逸らし、都合の良いことを言い出す。
悪気がある訳じゃねえのは、解ってる。
サクラは、途中で気づいただけだ。
無謀な恋だったってな。
中学の卒業式。
ーー途中で気づいたの!やっぱり、私が好きなのは……政宗くんだって。
桜がまだ膨らみもしない内に、
それだけ告げ、卒業。
ーー途中で気づいたのよ!憧れと好きな人は、違うって……。
弓乃も修学旅行で、
似たような事を言った。
踏ん切りが付かなかったのは、
多少なりともそれが原因だった…
……かもしれねえ。
けど、今更そんな事を掘り返す必要はない。