第221章 天邪鬼の愛〜中紅花〜(8)※弓乃×政宗様
賑わう模擬店。
コスプレ写真館、迷路、プラネタリウム、恋占い……
各クラスが催しもので賑わう。校内だけではなく模擬店は、グランドでも行われ、主に煙が出やすい焼きそば、たこ焼き、クレープなどは、テントを組み立てその下で、販売している。
廊下の窓からはその光景が見えるが、そんなことには目もくれずに、賑わうクラス前を避け、催し物が一切されていない教室前を通過して、ひまりは自分の教室に向かう。
曲がり角付近まで迫った時。
聞こえたのは、
「プリン販売してまーす!」
「ほうじ茶入りの和風プリン!お化け生クリームで、可愛いくデコってありまーす」
はつらつとした声。
廊下に長机を置き、プリンのみの販売をしていたクラスメイトの女子。売れ行きは良好なようで、まだ昼前だと言うのに、在庫数はあと僅か。
ひまりはそれを耳に捉え、曲がり角を回れば、教室に着く所まで来た時だ。
グイッ!!
突然、手首を掴まれ……
「んっ!!!」
何かで、口を覆われた。
そして
「ラッキ〜〜!」
「めっちゃ、可愛いじゃん!」
目の前を立ち塞いだ、他校の制服に身を包んだ二人の男子高校生。ひまりは、その制服に微かに見覚えがあった。
(確か、隣町の弓道部が有名な……)
「この子で合ってるよな?徳川の女」
「合ってるだろ?白いドレス着てるつってたし」
「んんーっ!!!」
ひまりは体を必死で動かしてもがくが、すぐに背後から拘束され、手も足も出ない。
背後から手で口を塞ぎ拘束していた、ガタイの良い男子高生。あることに気づきひまりの肩にからバッ!と、ブレザー剥ぎ取ると……裏面の内ポケットを確認。
「ビンゴだな。白いドレスに……」
【徳川家康】
その刺繍を見て、確信した。
ガラガラッ。
空き教室の扉が……
勢い良く開いた。