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イケメン戦国〜天邪鬼と学園生活〜

第221章 天邪鬼の愛〜中紅花〜(8)※弓乃×政宗様




廊下を走り去る、黒いワンピース。
今にも振り落ちそうな、赤いリボン。

狭い廊下の通路、横一直線で歩く団体や、立ち止まってぺちゃくちゃ喋っている、人の波を器用にすり抜けていく弓乃。

ひまりはそれを見つけ、


「ゆっちゃん!!」


叫んだ。しかし一瞬、目が合ったのにも関わらず、まるで聞こえないというように、走り去る後ろ姿。


「家康!私、ちょっと追いかけて来る!」


繋いでいた手を解き、走りだそうとするひまりの手首をやんわり掴み、家康は止めた。


「……こら、お節介」

「で、でもっ!泣いてっ…きっと、何か……」


目が合った一瞬。

確かに見えた、赤く潤んだ瞳。ひまりは、とても放っておくことが出来ず、余計なお節介だとしても、何も出来なくても、側にいてあげたいと、居ても立っても居られない気持ちを、訴えるが……



「……きっと何か」



暫くして、チャックをしたように形の良い口を、固く閉ざす。


「小春川が今、側に居て欲しいのは多分、ひまりじゃない」


家康にそう言われ、ますます口が重くなる。ひまりもそれは、わかっていた。現に、弓乃は自分に気づいても悲しげな目をして、走っていたのだ。それを考えれば、今、側にいて欲しいのは自分ではない事は、痛感。



「そうかもしれないけど。でも……っ…」



ぎゅっと、強く唇を噛み、何にも出来ない自分を責めるように、涙を薄っすら浮かばせた。しかし、すぐにごじごしと強く瞼を擦り、今、一番辛いをしているのは自分ではなく、弓乃だと。泣いている場合ではないと、必死に堪える。


(ゆっちゃん……)


隣にいた家康は息を吐き、頭に触れ……ぽんぽんと、まるで政宗が普段するように叩く。

さっきは、少しキツめの言葉を向けてしまったが、お節介な所も、こうして必死な所も、自分のことのように人の事を考えれる所も、好きだと改めて実感。



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