第221章 天邪鬼の愛〜中紅花〜(8)※弓乃×政宗様
咄嗟に拾おうとして、素手で触れた。
親指と人差し指で。
なのに、何で。
何で、小指から血が出ているのか意味不明。拾おうとしたヤツじゃない、破片に触れたのか……
私の小指に、赤い線が入っている。
まるで、赤い糸。
それが、切れたみたいに見えて。
政宗にバカって怒鳴られて……
そんなんで、滅多に泣かないのに。
涙なんか人前で見せたり、普段しないのに。
いつもなら、我慢が出来るのにさ。
(ほんと、ばかっ……!)
教室から飛び出した瞬間。
一気に襲ってくる後悔。
それでも、足は止まらなくて、廊下を全速力で走る。
「ゆっちゃん!!」
戦国学園の生徒、他校生、一般で来ている人で溢れかえった、廊下。その中で、驚いたように私の名前を呼んだのは……
呼び込み最中の、
ひまりと徳川の姿。
仲良く手を繋いで、
チラシを持って配っていた。
今は、その姿を普段通りに見れそうにない。
度量も器もなくて……
(ごめんっ、ひまり……)
聞こえないフリをして、そのまま素通り。
走って、走って。
こんな格好しても、
空は飛べないしさ。
もう、息切れしても。
ジロジロ視線が突き刺さっても。
走るしかなかった。
やっとひと気のない、体育館に繋がる通路に出た瞬間。
グイッ!!
背後から誰かに手首を掴まれて、
ようやく足が止まった。
恋愛の定番だったら、
どっちが定番なんだろう。
大好きな政宗が、追いかけて来てくれたのを期待して……振り返るほう?
それとも……
「はぁ、はぁ、お前、足速え……」
振り返った瞬間。
バカみたいに涙が落ちる。
「くっ、……」
何で私は、
少女漫画みたいな、
ヒロインになれないんだろう。