第220章 天邪鬼の愛〜中紅花〜(7)政宗様編
ガシャンッ!!
背後で派手にガラスが割れるような音が響いて、俺は咄嗟に振り返る。
「弓乃!大丈夫!?」
「う、うん。平気、平気!……っ!!」
「誰か塵取りと放棄持ってきて!」
素手で割れたグラスに触れ、弓乃の指が赤く染まるのが見え……
俺は、俊敏に動く。
しゃがみ込む弓乃の腕を引っ張り、立たせると、怪我した指を掴む。
「政宗……」
「ばぁか野郎!素手で触る奴がいるかっ!っとに……」
思ったより、デカイ声が出る。
……手がかかって放っておけねえ。
そう、後に続くはずだった。
だが、言う前に一瞬だけ見せた潤んだ瞳。赤いリボンは、下に傾き……
「…せ、……よ」
聞こえるか聞こえねえか。
「あ?ほら、見せろよ」
それぐらい小さい声で何かを呟き、ポタリと白い指先から、赤い血が床に落ちたかと思えば……
同時に透明の粒がそこに混じる。
(もしかして、泣いてんのか……)
小刻みに震えた魔女。
俺はそれの正体を確かめるように、掴んでいた指を離し、顔を上に向かせようと手を伸ばせば……
ドンッ!
「どうせ!バカよ!私は!」
「お、おいっ!」
弓乃は俺の肩を押して、出口に一目散に走り、教室から姿を消す。
「小春川!!」
その後ろを、
サッカー部の奴が追いかけて行く。
「政宗くん。さっきの子……確か昨日、一緒にお店にいた子だよね?」
さっき掴んだ時に、付いたのか。
俺の小指に、微かな赤い血。
(……っ、くそっ!)
そして、その後を俺は追った。