第220章 天邪鬼の愛〜中紅花〜(7)政宗様編
とりあえず、配役決めはひと段落。
俺は暗い通路を抜け、喫茶の方に移動。
教室半分の空間。
正直、狭いだろう。そう思ってはいたが割に間取りを有効に使い、こじんまりとした喫茶並のテーブル数はある。勉強机が二つ、四つくっ付き、その上から、黒いテーブルクロスをかけ、2人掛けのテーブルが五席、四人掛けのテーブルが三席。
廊下ではプリン単体の販売も行い、
売り上げ効果を狙うらしい。
(本気で、模擬店入賞狙ってるな。これは)
動きやすいよう、ブレザーを脱ぎ捨てる。シャツの袖を捲し上げ、接客に取り掛かろうとすれば……
「政宗……」
弓乃は近づいてくるなり、気まずそうに視線を横に向けた。「何だ?」用を尋ねると、無言で突き出すように、黒い布を差し出す。
「……羽織れば良いだけの衣装。だから、万が一破れても大丈夫」
「……ん?魔法使いか?これ」
手に取り広げれば、割に重い。
黒くて長いローブ。
胸元にエンブレム。
どっかの有名な映画の衣装に似ている。
「揃いのつもりか?」
ちょっと揶揄ってやると、
「べ、別にそんなんじゃないわよ!た、たまたまよっ///」
途端に動揺を露わにして、素直な反応と捻くれたような言葉が返ってくる。
そんな赤い顔して、説得ねえだろ。
口には出さない代わりに、
赤いリボンを指先で弾く。
痛いわね!
頭を抑え、
剥れた顔と強気な声。
けど、すぐに俯く。
こいつは、気づいてない。
(ったく。そんな嬉しそうな顔。一瞬だけ、見せるなよな)
どうせなら……
「なぁ。お前、さっき……」
「な、なによ……」
弓乃の頭が上がった瞬間。
俺は無意識に伸びていた、自分の腕に驚き、気づかれる前に引っ込め……
(っ!!)
誤魔化すように、首裏に回した。
行き場を失ったように、落ち着かねえ。
「何でもねえ。……ありがとな」
「え……」
珍しく弓乃に礼を口にした俺。