第220章 天邪鬼の愛〜中紅花〜(7)政宗様編
家庭科室。
冷やしていた、ほうじ茶のプリン。
仄かに香る和の匂い。
最後のトレイを取り出して、テーブルに乗せる。
あいつが作ったヤツ。
一目でどれか解って、
(やっぱりな。舌触りの滑らかさは、勝てねえ)
味見して笑みを零す俺は……
つまり、そうゆう事。なんだろうな。
ーーやる気ないなら、帰れ。
あんな台詞。俺に吐かれ、それでも必死に涙を堪えて、作りやがって。
ったく……。
その上。
廊下で見かけた二つの影。
頭に付けたでっけー赤いリボン。
「最近さ。小春川、可愛くなったよな。俺はその前から……何つーか。明るくて良いヤツだって、気になってて……」
だから、
他の男に取られる前に……
告白しようと思ってさ。
「えっと。そ、のさ……」
赤いリボンが一瞬、揺れ……
「文化祭前に、悪い。返事は、帰りでいーから。考えといてくれ」
影の一つは、教室の中に戻る。
暫く、弓乃は呆然とその場に立ち尽くし……
廊下の床に視線を落とした瞬間。
俺に背中を向けたまま、
溜め息を一つ零すのが耳に届いた。