第219章 天邪鬼の愛〜中紅花〜(6)弓乃編
好きなタイプ。
そんなの、誰だってある。
良く「好きになった人がタイプ」
って、聞くけど……。
でも、結局さ。
第一印象。
それも、大事なわけで……。
「ゆっちゃん……。こっち向いてくれる?」
ひまりは絡みついていた腕から手を離すと、今度は、私の両腕をやんわりと掴んで向き合うように立つ。
「いっぱい、いっぱい本当は伝えたい。でもね、私が辛い時。ゆっちゃんは、ずっと側に居てくれて、見守ってくれてた……」
「ひまり……」
だから……。
やんわりと掴まれていた手が、微かに震えているのが解って、私はハッと視線を向けるとゆっくりと、下に降りていく。
「頑張ってる人に頑張っては、禁句だって良く言うでしょ?だって、ゆっちゃんはいっぱい頑張ってるから。だから、キラキラして、眩しいから!」
「私がキラキラ?」
「うん!恋をしてるゆっちゃんも、恋に悩んでいるゆっちゃんも……」
それは政宗のことを、
想っている証拠でしょ?
茶目っ気に人差し指を口の前で立てて、笑うひまり。その姿は、女の私ですらドキドキするぐらい可愛い。
(はぁ……。やっぱり、訂正。全然、似てない)
それこそ、徳川と政宗がひまりを取り合っていた時。もし、もし、ひまりが政宗を選んだら、好きになったら……その時は、本気で真っ向勝負しようと決めていた。
負けないって。
(まぁ。徳川とくっ付くって自信もあったから、そう思えたって言うのもあるけど)
それでも、かつてこんな最強な女の子に挑もうとしていた自分。私は、それを思い出して、これでもかってぐらい、ぎゅーっ!と、ひまりに抱き着く。
「苦しいよーっ!」
「ありがとう。ちょっと元気出た!……よし!とりあえず、まずは衣装を渡しにっ!……「小春川」…え?」
やっと、明るい声が出た時……
突然、名前を呼ばれて振り返る。
呼んだのは、仲が良いクラスの男子。
一年の頃も同じクラスで、サッカー部のキャプテンをしている爽やか系。
「話がある。廊下に来てくれないか?」
無駄に恋愛漫画を読み漁った私。
それが、何を意味しているのか……
ぽりぽりと気恥ずかしそうに、頭をかく姿を見て、すぐにピンときた。