第219章 天邪鬼の愛〜中紅花〜(6)弓乃編
美形ヴァンパイア三人に、
生贄の花嫁姿の美少女が一人。
「ひまり。
生き血を吸ってやるから、来い」
「せ、先生!?」
「何言って!ひまりに、
噛み付いて良いのは俺だけだし」
「きゃぁ///ばかっ!」
「白くて柔らかそうで、
美味しそうだね……ひまりの頸」
「信康くん、ち、近くない?」
一本、何かの映画が撮れそう。
それとあともう一人。
うちのクラスには、ヴィジュアルばっちりの男子がいる。正直、私にとったら、一番の格好良い男子。
男らしくて、頼もしくて、人気もあって、料理もできる政宗は今、残りのプリンを教室に運ぶため、家庭科室に行ってる。
(昨日のプリン作り……。何を話したか全然、記憶にない)
元カノが出現して。
それからずっと、モヤモヤして……
プリン作りも失敗が続いて……
ーーやる気ないなら、帰れ。
政宗に呆れられたように、そう言われて泣きそうになったけど、グッと我慢してそれからはしっかり集中。
大好きなお菓子作り。
一番の取り柄、一番自信があることを疎かにするわけにはいかない。そう思って、無言で作り続けた。
朝のホームルーム。
普通に挨拶してくれたけど。
何となく自分から声が掛けづらくて、政宗に作った衣装。まだ、渡せていない。
(……やっぱ今日、元カノ来るのかな)
去り際に二人が、交わしていた会話。
嫌だけど、
嫌だって言える立場じゃない。
(はぁ……。とりあえず、衣装。早く、渡さないと)
プリンの上に、デコった生クリームお化け。生クリームの固まり具合がちょっと弱かったのか、少し溶けてきて……
お化けの表情が歪む。
まるで、私の今の心境を表したかのように、悲しそうに見えてますます気分が憂鬱になった。